先日、お嬢様が“拾ってきた”という人間はとてもヘンな生き物だった。なんだかちっこい(お嬢様よりも、だ)上にぷにゃぷにゃしてて、さらに目ん玉がこぼれ落ちそうにでっかい。今まで妹様よりちいさな二本足の生き物を見たことがなかった私は、そのちっこい人間がひどく気味の悪いモノに見えた。
そんな生き物を、はじめお嬢様は「たべもの」だと言っていたのに、なにが気に入ったのか「大きくなったらメイド長にするわ」なんて言いだした。
まってくださいお嬢様。メイド長は私の役目じゃなかったんですか?
そんなことをそれとなしに言ってみたけど相手はお嬢様だ。体よくスルーされた上に、妹様と親しくなりすぎたことを理由に、私は外の警備と庭の手入れを言い渡されてしまった。
なんてことだ。まったく面白くない。
面白くないけど、お嬢様の命令に逆らうのはもっと怖いから、大人しく“役目”をこなしている。外にいれば、少なくともちっこい人間は私の視界に入ってこないから、その点は気に入っていたりしたわけだ。
ところがどっこいそうは問屋が卸さない。“メイド長”候補になったちっこい人間が、私にいろいろとちょっかいをかけてくる。「サボっちゃダメよ」「おひるたべなさい」etc... 私はアンタなんかと遊んでるヒマはないってーの。ああもう、うるさい!!
そんなこんなである日、ストレス溜め溜めの私は“夜の散歩”にと洒落込むことにした。思いっきり羽を伸ばしたかったから“変化(へんげ)”して……とか思っていたら、ついつい館を出る前から体中がゾワゾワして、体が変化をし始める。
……と、いきなり誰かが裾を引っ張る感触が。
見るとあのちっこい人間が。しっかりそこに立っていた。
「どこいくの? どーしてかおがかわってるの?」
……。困った何と答えよう。
「びょうきなの?」
…今、すばらしく中途半端な姿だからね。そう思うのも当たり前かな。
しかしこれはチャンスだ。ちっこい人間なんか口先三寸で丸め込んじゃえ。
「そーなんです。ちょっと具合が悪いから、今からお医者に診てもらおうと思いまして」
えへへと愛想笑いをしつつ、心の中では『頼むからさっさとその手を離してくれ。私は散歩に行きたいんだから』とか思ってた。
「おいしゃにいくなら、“えーえんてい”がいいわよ」
え?
「……」
えーと、これは……私のことを心配してくれてる?
どうしよう。どうしたらいいのかな? ちっこい人間が私を心配してくれてるなんて思ってもみなかった。もしかしたら今までの「ちょっかい」もそうだったんかな?
私は進退窮まって、ちっこい人間に言った。
「……じゃ、そこに案内していただけますか? 私はエーエンテイの場所を知りませんし。でも、空を飛んでいったらすぐだと思いますから」
二人で外に出て、私は“変化”した。ちっこい人間はびっくりしていたけれど、構わず彼女を背中に背負(しょ)って、空にふわりと舞い上がった。ちっこい人間がもぞりと動く感触がする。彼女が乗った首の付け根あたりがほっかりと温かかった。
「落っこちないように、鬣(たてがみ)をしっかり握っていてくださいね。咲夜さん」
「うん。わかった、めーりん」
それが『咲夜さん』と呼んだ最初で、『めーりん』と呼ばれた最初だった。
SAIで水彩風味を目指して描いた1枚なんですが、物語をくっつけないと、どういうシチュエーションかまったく分からないという罠(w。
そしてpixivで投稿する際に、1000文字の壁があまりに厚くて、約1/3を削ってUPするという罠。
東方はいろんなシチュエーションとか捏造設定で遊べるなぁ、とつくづく思いました(w。
ツール:SAI
- 作品名
- 竜とちっこいにんげん。
- 登録日時
- 2010/07/05(月) 22:27
- 分類
- 東方Project