峰。
峰。 本文
てろんとした…。
ぬくもり。
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ぬくもり。
(ちりん…。ちりん……)
あら……珍しいわね。
(ちりん……)
峰(ホウ)。……峰。
……にぁ。
どうしたの? 縁側(こんなところ)で。
にぁ。
おやつが欲しいの?
(ちりん……)
貴ちゃんは? ……あ……。
にぁ。
雨……。
(ちりん……)
……そう、雨が降ってたのね?
にぁ……。
ふふふ……いい子ね。
(ちりん……。ちりん……)
あなたも、この時間に私がいるのが珍しいって思ってるでしょ?
(ゴロゴロゴロゴロ……)
……今日はね、なんとなく。
なんとなくね。
なんとなくね。
(ゴロゴロゴロゴロ……)
ふふふ……いい子。……柔らかいわ。
……岳(ガク)も……同じ手触りだったわね……。
……岳(ガク)も……同じ手触りだったわね……。
……にぁ。
……ごめんなさい。あなたの知らない子の話をしちゃって。
この家と……あなたが捨てられてた家にね、猫がいたの。
あなたと同じように、箱の中にいたのよ……。
この家と……あなたが捨てられてた家にね、猫がいたの。
あなたと同じように、箱の中にいたのよ……。
にぁ。
そう……あなたの大先輩。
あなたより、18年も前にこの家に来た。……家族だったの。
あなたより、18年も前にこの家に来た。……家族だったの。
(ゴロゴロゴロゴロ……)
長生きして頂戴。
あなたも……貴ちゃんも。
あなたも……貴ちゃんも。
にぁー。
……ん? どうしたの?
にゃにゃ。……にゃにゃ。
貴ちゃんの家に行くの?
ひとりで帰れるでしょ?
ひとりで帰れるでしょ?
(ちりん……。ちりん……)
にぁ……。
にぁ……。
……?
んぁー。
わかった。一緒に行くのね。
にぁ。
(ちりん……。ちりん……ちりん……)
(ちりん……。ちりん……ちりん……)
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(カラカラカラカラ……)
貴ちゃん?
(ちりん……)
上がるわよ。
(独白)……春花が来てるのね。
(独白)……春花が来てるのね。
(ちりん。ちりん……)
貴ちゃ……
タスケテ、やなぎはらさん……。
……ずいぶん、おモテになってるよーね。
重い……で、暑い……。
で、しょうねぇ。
目が覚めたときには、この状態で。……というか、激烈に暑くなって……。
目が覚めたワケね。
そー……デス。
……タスケテ。
……タスケテ。
峰(ホウ)が呼びに来たのかしらね。
あい?
珍しく母屋の縁側にいたのよ。
……とにかく、ドケて……。
はいはい。
…最近重くなってね、春花……しょ……と。
…最近重くなってね、春花……しょ……と。
ぶわー……ありがと。
自分で布団、外せる?
なんとか。……布団の上から腕をブロックされちゃって。
……参った。
……参った。
あとで叱っておくわ。
いやー、アタシが言うよ。
私からも言っておく。じゃないとダメよ。
あー……そーですね。お願い。
起きる? ……起きれそう?
蒸されていい具合に茹だりすぎてる。
ちょっと無理っぽい。
ちょっと無理っぽい。
タオル、濡らして持ってきてあげましょうか?
…あ、助かる。
じゃ、待ってて。春花も母屋に置いてくるから。
ここでもいいよー。
目が覚めて母屋だったほうが、コトの重大さも分かるでしょうから、
連れてくわ。
連れてくわ。
ん……わーった。
すぐ来るわ。
うん。よろしくー……。
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お待たせ、貴ちゃ……
……タスケテ……。
あらあら。
重い。猫重い。……暑い。
……峰は、自分のために春花を退かせたかったのね。
……どっちでもいいし……。
春花ばかり可愛がるから。
そんなことないよぅ。……てか、峰退けて、峰。
はいはい。