桜餅
桜餅 本文
知ってた?
桜の葉っぱ、温めたらね……(w。
桜の葉っぱ、温めたらね……(w。
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○岩下家・庭
貴子が桜の大枝を切っている。
そこに秋子。
本日定休日。この家の主人はお出かけ中。
そこに秋子。
本日定休日。この家の主人はお出かけ中。
秋子
何してるの?
貴子
見ての通り。
秋子
ずいぶん大きな枝ね。どこから持ってきたの?
貴子
……河川敷。業者が来て手入れしてたんだよねー。
ぼちぼち花も咲くからさー。ある程度揃えとかないと、花見シーズンになったら大変なんじゃない?
そーでなくても、ウチなんかトラックの屋根にバシバシ当たってたし。
ぼちぼち花も咲くからさー。ある程度揃えとかないと、花見シーズンになったら大変なんじゃない?
そーでなくても、ウチなんかトラックの屋根にバシバシ当たってたし。
秋子
そう。…で、これ、自転車に積んで持ってきたの?
貴子
うん。そう。……しかし、さすがにでかかった。
手水鉢に差しといたんだけど、飾るにはちょっとでっかいからねぇ。
手水鉢に差しといたんだけど、飾るにはちょっとでっかいからねぇ。
秋子
それで、切ってるわけ?
貴子
まぁねー。
ちょっとした花見ができるでしょ?この庭で。……手水鉢、動かさなきゃな。
ちょっとした花見ができるでしょ?この庭で。……手水鉢、動かさなきゃな。
秋子
……。アレで大丈夫なの?
貴子
大丈夫でしょ。元はタダの臼だし、石の。
秋子
そうじゃなくて、小さくない?
貴子
あーそっちか。
毎日 水換えてやってたら、花が咲いて散るくらいは持つわよ。
毎日 水換えてやってたら、花が咲いて散るくらいは持つわよ。
秋子
いえ、そうでもなくて……
貴子
……ん?
……大丈夫でしょ。支柱立ててやるし。
ほら、あすこ(庭の一角を指さす)
……大丈夫でしょ。支柱立ててやるし。
ほら、あすこ(庭の一角を指さす)
秋子
ん?
貴子
あのあたりに臼を持っていってだねー、あの石とかを利用してやったら、そんなに景観を損ねないで、ちっさい桜の木が立ってるように見えるんじゃない?
秋子
ああ、なるほど
貴子
……んね?そのためにちょこっと切ってるわけだし。
秋子
バランス取るために剪定してたの。
貴子
(ししし、と笑って)そゆこと。
……うん。こんな感じかなー?
……うん。こんな感じかなー?
秋子
手伝いましょうか?
貴子
ん?
秋子
臼、動かすの。
貴子
そーだね。……あ、でもちょっと待って。先にこの枝燃やしちゃおう。
秋子
その桜はどうするの?
貴子
ちょっとの間だけ倉庫の壁にでも立てかけとくくらいは大丈夫でしょ?バケツに漬けとけば。
それやるからさ、悪いけどココ掃いて集めといてよ。
それやるからさ、悪いけどココ掃いて集めといてよ。
秋子
(肩をすくめて)了・解。
間
○同場所。
ふたりの足元には桜の若い小枝が積み上がった小山がひとつ。
秋子は1枚分の新聞紙をねじって、小枝の下に突っ込む。
貴子はポケットからマッチを取り出して擦り、新聞紙に火を点ける。
火は新聞紙にすぐに点き、するすると燃えていく。
やがて火によって桜の小枝たちがしおれ始め、葉に火が移る。
秋子は1枚分の新聞紙をねじって、小枝の下に突っ込む。
貴子はポケットからマッチを取り出して擦り、新聞紙に火を点ける。
火は新聞紙にすぐに点き、するすると燃えていく。
やがて火によって桜の小枝たちがしおれ始め、葉に火が移る。
秋子
……あら?
貴子
……うん。……これは、びっくり。
秋子
へぇ。
貴子
お茶が欲しくなる。
秋子
(ふふ…と笑い)入れてきましょうか?
貴子
……んにゃ。
火が落ち着いてから買いに行こうよ、喜久屋さんに。
火が落ち着いてから買いに行こうよ、喜久屋さんに。
秋子
あら珍しい。
貴子
でもこの匂いは反則っしょ?
秋子
そうね。
貴子
この時期だから食べたくなるのよねぇ。ほかの季節だったら見るにもイヤだけど。
秋子
そんなこと言って、喜久屋さんのだったらなんでも食べるクセに。
貴子
……それでも1コが限界ですよ。
秋子
お抹茶、点てましょうか?
貴子
あー……いいねぇ。……あ、でもそれ今度にしようよ。
兄貴も誘って、三人でのんびり花見しながら野点とかって良くない?
兄貴も誘って、三人でのんびり花見しながら野点とかって良くない?
秋子
なんちゃって野点?
貴子
そそ。カセットボンベに鉄瓶でー。
秋子
鉄瓶じゃ柄杓が入らないわよ。
貴子
柄杓と同じくらいの大きさの湯飲みに注いだらいいんだよ。それで充分。“なんちゃって”だもの。
秋子
ふふふ……じゃ、そうしましょうか。
貴子
そんときは薯蕷饅頭ね。
秋子
はいはい。……今日は桜餅よね。
貴子
もちろん。