あり得ない未来。2
あり得ない未来。2 本文
あり得ないお話。ふたつめ。
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……すみません。
謝ってもらうことではないわ。
すみません。
貴女に春花が止められるわけがないもの。
一言(いちごん)もない。
……で? どうするの? 逃げる?
逃げて良いなら。
どこに?
北がいいかな。北欧とか。
……ヌードストローム? ブロッホ? それともエドヴァルド・ムンク?
どれも悪くない。彼らの絵は好きよ。
茶化すのは止めて頂戴。
うっかり南に行こうか、なんて言っちゃったからね。
誰に?
春花に。
まっすぐ北を探すわよ、あの子だったら。
そう……かな。
ええ。貴女のこと、よく知っているもの。
貴女自身以上に知っているんじゃないかしら?
貴女自身以上に知っているんじゃないかしら?
それは恐いわね。
その恐い女に手を出すから。
あんたとは違う意味で、情が深いわよね、春花は。
………。
誰に似たのかしらね?
私にあなたたちを止める権利はないわ。
春花だっていい大人だもの。親がどうこう言う年齢ではないし。
春花だっていい大人だもの。親がどうこう言う年齢ではないし。
しかし立場ってもんが……。
引退すれば、そんなものもなくなるわ。
………。
別に、春花でなければならない、というものでもないもの。
次の代くらいで、血統経営はやめにしても良いんじゃない?
私が出来なかったことを、春花がする。…自分の行動に自分で責任を取るのよ。
私が出来なかったことを、春花がする。…自分の行動に自分で責任を取るのよ。
………。
結婚はしない。相手は貴女。どうやっても血は残せないもの。
酷い言われようね。
いいえ……。
それで、良いのよ。ちょうど良い時期なんだと思うわ。
……と言っても、30年くらい向こうの話でしょうけどね。
貴ちゃん。
はい。
責任、とってね。
いや。……その。
貴女に、あの子を預けるから。
ちょ……ちょっと……
だから、できるだけ長生きして頂戴。
だから、できるだけ長生きして頂戴。
待って。……待て。まて。
何?
早とちりしてますがね。
何を?
その……。
別に、春花とセックスしたわけでは……ないのですが。
別に、春花とセックスしたわけでは……ないのですが。
………。
信じてよ。
にわかに信じがたいわね。
ちょっと。
一体全体。私の歳、いくつだと思ってるのよ?
私の、一つと3ヶ月半上。
そんなことする体力、もうあるかい!
………。
正直に話す。
……キスは、しました。あの子を落ち着かせるために。
しかし、それ以上は、断じて、して、ない!
……キスは、しました。あの子を落ち着かせるために。
しかし、それ以上は、断じて、して、ない!
それだけすれば、充分だわよ。
あの子にとっては。
あの子にとっては。
ええ?
あなたが好きすぎて、今まで誰ともつき合ってないんだもの。
それは知ってるけど。
その……。
その……。
私以上に潔癖なのよ。そのあたりが。
ぅわ……。
自分を基準に考えないことよ。
……自分が基準にまったくならないことくらいは、重々分かってます。
そういうわけで、キスだけで充分なのよ。
うわー……。
だからね。
……(絶句)
せいぜい長生きをして頂戴。
………。