オリジナル格納庫

ある意味、カオスの巣窟。

あの桜並木の下で 小品集 Another Stories

あり得ない未来。

あり得ない未来。 本文

あり得ないお話。
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貴ちゃん。貴ちゃん。
………。
……貴子叔母さん。
はい。なんでしょう?
この間の返事、聞きたいのだけど?
聞かなくても、分かってるでしょ?
ちゃんと、叔母さんの口から聞きたい。
ふーん。……じゃ、却下。
なぜ? 理由を訊いても良いわよね?
……そういう物言い、母さんにそっくりだね。
私が母さんじゃないから?
違うよ。
じゃ、なぜ?
あんたの叔母だから。
でも……
血は繋がってなくても、叔母は叔母。
だから、却下。
約束したじゃない。
そうだっけね?
無理って言わなかったかね、その時。
「ずっと一緒にいたい」って言ったら、『それだったら、なんとか』……って言ったわ。
………。
……ああ。言ったね、そう言えば。
だから――
柳原を継いだのなら、そのためにしなくちゃならないことがあるでしょ?
………。
私としては、それをして欲しい……かな。
じゃ、貴ちゃんはどうするの?
別に。この家に居れるときまで居るだけだね。
あんたが落ち着いてくれたら、別にこの国にいなくてもいいし。
メルボルンに行く?
それは、ないな。
カホリさんのトコにはいかない。
………。
アフリカあたりにアトリエ構えるかなー。あるいは南の島。タヒチとか。
ゴーギャンのように?
そうね。彼は理想の人のひとり……かな。
………。
別に希望に満ち満ちて行くわけではないから、理想と現実のギャップに絶望することもないわよ。
………。
柳原になったのが、あんたじゃなかったら………。
え?
……良かったのにね。
好きこのんで、スキャンダルの種を抱えるのは、止めたほうが良い。
貴ちゃん。
………。
叔母さんと住んでるっていうだけでもダメなの?
………。
よくある話だと思うのだけど?
………。
貴ちゃんと一緒にいたい。
……そう。
貴ちゃんが、私をどうとも思ってなくても良いから。
………。
私は、貴ちゃんと一緒にいたい。
……(苦笑している)
叔母離れ、しなさい。そろそろ。
やだ。
それは、困ったな(苦笑)
………。
………。
………。
春花。
………。
この際だから、はっきり言っておくね。
………。
あんたのことは、愛してる。
………。
姪として、でしょう?
………。
………。
……いや、ひとりの人間として。
え。
だから、一緒にいるのは、まずい。……そう思う。
叔母と姪だから?
そう。
そして、そろそろ自分に歯止めが利かなくなってきてる。
それを自覚してる。だから。
だったら…。
自ら苦労を背負い込む必要はない。
私は歳を取りすぎた。あんたといくつ違うと思ってる?
………。
よほどのことがない限り、私の方が先に死ぬ。
そのあと、どうするつもりかな、春花は。
独りでいるつもりかな。
………。
置いて行かれる辛さは、体験しなくていいならば、体験しないほうがいい。
場合によっては一生台無しにすることも、あるからね。
それは、貴ちゃん自身のこと?
さぁ、どうだか。
それでも……いい。
それでもいい、って私が言ったら?
んー………。
それでもいいから……私は貴ちゃんの側にいたい。
………。
貴ちゃんに「ただいま」って言って、貴ちゃんに「おかえり」って言われたい。
………。
貴ちゃんが作るゴハン食べて………。
ハル………。
もう、それは無理なの?
……ハル……
ん、……んん………。
………。
………。
いい子だから。
駄々を捏ねるのは……ん………。
貴………。
………。
………。
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