合鍵。
合鍵。 本文
蓉子がそれをくれたとき、心から嬉しかったと同時に不安になった。これは心して預からねば、と。
ひとつ間違えれば、私はあのころの私に戻ってしまう。
そしてそれは、現実のものとなる……。
ひとつ間違えれば、私はあのころの私に戻ってしまう。
そしてそれは、現実のものとなる……。
……ん……暑……。
……。この……におい……。
……。この……におい……。
――――。
――せ……。
――――。
……いつ来たの?
……。
こんな夜中に、危ないわ。
……。
……。
……。
なにが、あったの?
……なにも……。
……。
……そう……。
……そう……。
……ごめん……。
いいのよ。私も、会いたいかな、って思ってたとこ。
……。
……。
……甘やかさないでよ。
……甘やかしてなんか、いないわよ。
もちょっとしたら、帰る、から……。
危ないわ。
だいじょぶ。
ダメ……朝まで、私といて頂戴。
言ったでしょ? 私もあなたに会いたいって、思って寝たの。
あなたに、抱きしめられたい……て。
言ったでしょ? 私もあなたに会いたいって、思って寝たの。
あなたに、抱きしめられたい……て。
……。
だから……。
……。
だから。
居て、ここに。
私を、抱きしめてて。
居て、ここに。
私を、抱きしめてて。
……。
好きよ。聖。
大好き。
大好き。
止めてよ……。
ホントよ。
……止めて。
……。
……わかった。
……わかった。
蓉子は優しい。
それは時として、私に私自身の弱い部分を否応なしに突きつけてくる。
精神的に弱くて傷つきやすく、あの時から何一つ変わっていない、どうしようもない人間なんだと、思い知らされる。
夜中に車を飛ばし、忍び込むようにしてベッドに潜り込んできた人間を、嫌な顔一つせずに受け入れる蓉子。小さな頃思い描いていた母親のような仕草で、私を抱き留めてさえしてくれる蓉子。
そんな行為を疎ましく思いながらも、しかし振り払うことができずに、蓉子にしがみつく私。その滑稽さ。
ああ。
あなたは私にそれを呉れるべきじゃなかったんだ。
脱ぎ捨てたGパンのポケットに、無造作に突っ込まれたそれ。
蓉子の部屋のドアを開けるために使ったそれ。
ちっぽけな、冷たく鈍く光るそれ。
その小さな、手のひらに包まれてしまうほど小さなそれ。
こんなちっぽけなモノに囚われる自分。
あなたと私をつなぐ、小さな……
それは時として、私に私自身の弱い部分を否応なしに突きつけてくる。
精神的に弱くて傷つきやすく、あの時から何一つ変わっていない、どうしようもない人間なんだと、思い知らされる。
夜中に車を飛ばし、忍び込むようにしてベッドに潜り込んできた人間を、嫌な顔一つせずに受け入れる蓉子。小さな頃思い描いていた母親のような仕草で、私を抱き留めてさえしてくれる蓉子。
そんな行為を疎ましく思いながらも、しかし振り払うことができずに、蓉子にしがみつく私。その滑稽さ。
ああ。
あなたは私にそれを呉れるべきじゃなかったんだ。
脱ぎ捨てたGパンのポケットに、無造作に突っ込まれたそれ。
蓉子の部屋のドアを開けるために使ったそれ。
ちっぽけな、冷たく鈍く光るそれ。
その小さな、手のひらに包まれてしまうほど小さなそれ。
こんなちっぽけなモノに囚われる自分。
あなたと私をつなぐ、小さな……