歯医者その後
歯医者その後 本文
佐藤が歯を抜いてきたよーです。
シナリオ形式で。
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シナリオ形式で。
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蓉子がリビングの定位置で、雑誌を読んでいる。
玄関の方で音が聞こえる
玄関の方で音が聞こえる
音
(かしゃん……かたん……キィ……ぱたん……)
蓉子、雑誌から顔を上げて、リビングとさほど長くない廊下を隔てている扉に目を向ける。
そこから聖が、むっつりと入ってくる。
そこから聖が、むっつりと入ってくる。
聖
………。
蓉子
おかえりなさい。
どうだった?
どうだった?
聖
んー……。
蓉子
痛いの?
聖
(首を横に振って、自分のほっぺたを指さす)
蓉子
?
聖
がーじぇが……ぬぇ……。
蓉子
まだ噛んでるの?
(無言でうなずく)
蓉子
とにかく、着替えてらっしゃい?
聖
(無言で頷いて、寝室方面に消える)
○同 キッチン。 蓉子
蓉子、お茶を淹れてリビングに戻る。
○同 リビング。
蓉子がリビングに戻ってくると、着替えた聖が自分の定位置に座り込んでいる。
機嫌が良くない。
蓉子はリビングのガラステーブルの上に、聖のカップと自分のカップを
それぞれの位置に置いて、座る。
機嫌が良くない。
蓉子はリビングのガラステーブルの上に、聖のカップと自分のカップを
それぞれの位置に置いて、座る。
聖
あぃがと。
(飲む。麻酔のせいで上手く飲めずに、口に含んだ量のほとんどをこぼしてしまう)
う"ー………。(盛大に顔をしかめる)
(飲む。麻酔のせいで上手く飲めずに、口に含んだ量のほとんどをこぼしてしまう)
う"ー………。(盛大に顔をしかめる)
蓉子
お白湯よ。口を湿らす程度にしてね。
聖
もーひょっと、早く言てひょひかっか……。
蓉子
麻酔、まだ切れてないのね?
聖
(頷く)
蓉子
そう……。
そんな調子じゃ、夕飯は何にしようかしらね?
そんな調子じゃ、夕飯は何にしようかしらね?
聖
(なにやら1枚の紙を取り出して、ガラステーブルの上を滑らせるようにして蓉子に渡す)
蓉子
……?……ああ、注意書きね。
なになに?
『本日、抜歯をしましたので、次のことに注意してください。』……なるほど。
『1.今噛んでいるガーゼは、2~30分間は噛んだままで、
その後ガーゼは捨ててください。
2.今日はお風呂とお酒は控えてください。』
……じゃ、今日は別々ね。
なになに?
『本日、抜歯をしましたので、次のことに注意してください。』……なるほど。
『1.今噛んでいるガーゼは、2~30分間は噛んだままで、
その後ガーゼは捨ててください。
2.今日はお風呂とお酒は控えてください。』
……じゃ、今日は別々ね。
聖
うー!!(それは嫌だとばかりに、首を横にブンブン振る)
蓉子
『3.あまり何度もうがいをしないようにして下さい。
4.今日はあまり疲れないようにして早くお休み下さい。』
ほら、こうも書いてあるから、今日は別々に寝ないと。
4.今日はあまり疲れないようにして早くお休み下さい。』
ほら、こうも書いてあるから、今日は別々に寝ないと。
聖
ひょーこひゃん!!
蓉子
お薬は指示通りにお飲み下さい。』
お薬、出てるの?
お薬、出てるの?
聖
んー……(渋々、薬袋を差し出す
蓉子
はい。素直でよろしい。……食後30分ね。
聖
(頭を抱える)
蓉子
『6.食事は、麻酔がきれたら普段どおりで結構です。』ですって。
良かったわね。でも、おうどんくらいにしておきましょうか?
良かったわね。でも、おうどんくらいにしておきましょうか?
聖
ひょーでふね…。
蓉子
『出血が止まらなかったり痛み等でご心配な方は一度ご連絡下さい。』
そろそろ良いんじゃないの? ガーゼ。
そろそろ良いんじゃないの? ガーゼ。
聖
……ん。
(口の中からガーゼをつまみ出し、ティッシュに包んで捨てる)
……うー……気持ち悪い……。
(口の中からガーゼをつまみ出し、ティッシュに包んで捨てる)
……うー……気持ち悪い……。
蓉子
お白湯、ちょっと口に含んだら?
麻酔をしたところと反対側から飲んだら上手く飲めるわよ?
麻酔をしたところと反対側から飲んだら上手く飲めるわよ?
聖
うん……
(蓉子に言われたとおりにカップに口を付けてちょっぴり飲む。今度は上手く飲めたようだ)
よく知ってるわね。
(蓉子に言われたとおりにカップに口を付けてちょっぴり飲む。今度は上手く飲めたようだ)
よく知ってるわね。
蓉子
経験者は語る、よ。
聖
なるほど。
蓉子
……で、どうだったの? 痛くなかったでしょ?
聖
うん。……痛くなかったし、それよりもあっけなくて気が抜けた。
蓉子
そう。良かったじゃない。
昔、私が抜歯したときは大変だったもの。
昔、私が抜歯したときは大変だったもの。
聖
そうなんだ。……そうそう……
聖、尻のポケットから何やら取り出してテーブルに置く。
テーブルに置かれたのは、ビニールパックに入れられた聖の抜歯した歯。
テーブルに置かれたのは、ビニールパックに入れられた聖の抜歯した歯。
蓉子
(それを覗き込んで)貰ってきたのね?
聖
何かの記念になるかなと思って。
蓉子
ふぅ……ん?
聖
な、何よ?
蓉子
私に見せたかっただけじゃないの?(にや、と目が笑う)
聖
………。
蓉子
(目だけ笑ったままで聖を見ている)
聖
……そのとーりです。(お手上げのポーズ)
蓉子
確かに、これだったら簡単に抜けたでしょうね。
聖
分かるの?
蓉子
(歯根辺りを指さして)ほら、ここ。
聖
……?
蓉子
歯の根っこがまったく別れてないじゃない。
奥歯はたいてい3~4本に根が別れているのに、
それが閉じて一本化しているから抜けやすかったのだと思うわよ?
奥歯はたいてい3~4本に根が別れているのに、
それが閉じて一本化しているから抜けやすかったのだと思うわよ?
聖
うん。2,3回左右に動かしたらすんなり抜けた感じがした。
……あんなに気合いを入れて行ってきたのに。
……あんなに気合いを入れて行ってきたのに。
蓉子
私の時なんて、根が張りすぎてて2時間近くもかかったあげくに、
結局歯を3つに割って抜いたのよ。
以来懲りて、それまで以上に丁寧に歯を磨くようになったわ(ころころと笑う)
結局歯を3つに割って抜いたのよ。
以来懲りて、それまで以上に丁寧に歯を磨くようになったわ(ころころと笑う)
聖
……それ、いつのこと?
蓉子
高等部の頃よ? 高一の時。
聖
えー、気がつかなかった。
蓉子
夏休み中のことだもの。
聖
あー。なるほど。
蓉子
麻酔の方は、どう?
聖
んー……まだなんだか腫れた感じ。あまり痛くはないけどね。
蓉子
切れたらすぐに分かるわよ。痛くなるもの。
聖
えー。それヤだなぁ。
蓉子
(薬袋の中を見て)痛み止め、くれなかったのね?
聖
いらないかなと思って、断っちゃった。
蓉子
知らないわよ? 夜中に熱が出ても。
聖
マジですか?
蓉子
人によってはね。
首の時の痛み止めが少し残っていたわね。痛みが酷いようだったらそれで代用しましょう。
首の時の痛み止めが少し残っていたわね。痛みが酷いようだったらそれで代用しましょう。
聖
はーい。
ねぇ、蓉子さん。
ねぇ、蓉子さん。
蓉子
何かしら? 聖さん。
聖
そろそろお腹が空いてきました。
蓉子
麻酔、まだ切れてないでしょう?
聖
そーだけど。切れて痛くなったら、、またゴハンどころじゃなくなると思うんだよね。
蓉子
だから?
聖
その前に食べときたい。
蓉子
……熱いものとか、刺激のあるものはダメね。
やっぱりおうどんにしましょう。聖のはぬるめでね。
やっぱりおうどんにしましょう。聖のはぬるめでね。
聖
えー! それ、あんまし美味しくないんじゃぁ?
蓉子
美味しいように、腕によりをかけて作るわよ?
温泉卵入れてあげる。
温泉卵入れてあげる。
聖
え? ……えへへへ……。
蓉子
じゃ、ちょっと待ってて(立ち上がる)
聖
うん♪
蓉子
(温泉卵で騙されてくれたわね)
蓉子、キッチンに消える。
聖
温泉卵~♪