へっぽこ・ぽこぽこ書架

おはよーございまーす。……寝坊してすみません。
あ、手伝います。
……あれ？　御院家（ごいんげ）は？

……ええ、それが……。

？

外の……鐘突堂（かねつきどう）のところに。

じゃ、私、呼んできましょうか？

いえ……。……ええ、お願いできますか？

りょーかいでっす！

あ、聖さん。

はい？

御院家、今、少し機嫌が悪いかもしれませんから。
マズイと思ったら、すぐに逃げてきてくださいね。

はい？

……大丈夫だと思いますけど。

御院家。そろそろ朝ご飯ですよーって、坊守さん……が……。

……。

えー……とぉ……。

おはようございます。私なら大丈夫ですよ。

御院家。……それ……は。

はい。

こ……。

ええ、子犬ですね。

でも、それ……。

生まれてすぐに、持ってこられたんでしょうね。

……。

可哀相に。……しかし、この子たちの寿命だったのだと、思います。

でもっ！……。

置いて行く人は、そこまでは考えていないということです。
寺だから、何とかしてくれるだろう。命は粗末にしないだろう。
そう考えるんです。多くの人は。

……でも……。

ええ。この通りです。
自分たちだけでは体温を保つことができないから。
置いて行った人はたぶん知らないと思います。
あるいは……

あるいは？

分かってて置いていくか。

そんなっ！

供養してくれると、思うんでしょうかね？
私にはわかりませんけども。

御……。久（キュウ）さん……。

……聖さん。

はい。

朝ご飯、食べてからにしましょうか？

……。

柿の木。

はい？

あそこの柿の木の下には、たくさん埋まっているんです。

……は……い。

あそこだと、たぶん寂しくありませんから。

……ていうか、あの木の柿で、干し柿作ってませんでしたっけ？

ええ、美味しかったでしょう？　去年お送りしたヤツ。

……美味しかった、です。

ふふ……。……功徳。なんですよ。

功徳、ですか。

ええ、巡り巡ってってヤツですね。

な、なるほど。
……勉強になりました。

今年も、送って差し上げます。

あ……ありがとうございます。
蓉子もすごく喜びます。

じゃぁ、朝飯にしましょうかね。
朝のお勤めを寝坊でサボった分、働いてください。

はーい。了解しましたぁ。