花束を君に…
花束を君に… 本文
花屋の前とか、街角に何気なく置いてあるプランターの花を見たときとか。いいや、そんなんじゃなくて。
ふと出かけた先の公園とか、大学の敷地内とかで、ぽつんと咲いているちっちゃい花が目に入ることがあって。それもしょっちゅうあって。
それを見たとき、ふと君の顔を思い出すんだよね。
そしたらね、
「ああ、今日こそは……!」
とかって強く思うんだけど、さぁそれを実行しようと思ったら、必ずと言っていいほどなにやら邪魔がね、入るわけですよ。
例えば、そう。君からメールが来て、でこちんが「今から来るって」とか、そうじゃなかったら他からメールが入って「研究室に来い」とか。
なんで毎回毎回タイミング良く邪魔が入るんかな。……もう。
そんな感じ。
そうこうしているうちにね、完全にタイミングをなくしちゃうわけ。
そうなるとさ、心も折れちゃうわけよ。
そんなことが続くとさ、しまいには「どーして自分はこんなに生きることに不器用なんだろう」って思っちゃうんだよね。
うん。そう。
もちろんそれって、単なる思いこみなんだけど、その時はいつも真剣に思っているわけですよ。
……君とかさ、お姉さまとかみたいに、かっこよく生きていけないの。
困ったねぇ。本当に困った。
で、ですよ。
ここからが本題なんですよ。
でね。そんなことでもう何年も無駄に時間を費やしちゃったんで、今回こそはと頑張ったわけ。
頑張りすぎて、花屋のおねーさんに何言ったか、まったく記憶にないくらい。
いや。そのくらい緊張したって話。
だってさ、君にあげる花だよ?
もうこれしかないでしょう。…ねぇ。
というか、これしか思いつかなかった。いつまであのころを引きずってるんだ? ……って感じだけどね。
だから、まぁ。
月並みな花で悪いんだけど、これ、君に。
……うん。ごめん。それは反省してます。
ああ、そんな歌もあったねぇ。そこまで多くはないけど。……てか、あれはどう考えてもやり過ぎでしょう?
いくら私でも、そこまでは無理ですから。
……あ、そうそう。1本だけ色違いが入ってるから。
どこかに埋まっていると思う。
それ、見つけ出してよ。
それにさ、私が君に、心から伝えたいことを書いたタグが付いてるから。
うん。うん。
そうだね、その通りだね。
でも、探してほしい。
きっとすぐに見つかるから。
この色の中でたった一本だけの……。