へっぽこ・ぽこぽこ書架

二次創作・駄っ作置き場。 ―妄想と暴走のおもむくままに―

艦これ駄文。

艦隊行進曲

艦隊行進曲 本文

ひさびさにちょっとドタバタ的なモノを。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
○ヒナセ基地司令官室 夜
 コンコン、とノックの音に続いてドアの開く音。
どうぞー……て、なんだレーコさんか。
なんだはご挨拶だなぁ。
こんな夜更けになに?
大したことではないんだが、例の件、どうするんだい?
例の件……ああ、あれか。
……レーコさん、私の代理で出てよ。
そうはいかないだろ。
私にだって要請が来ている。
マジか。
仕方がないさ。姫提督(アサカのこと)の当番なんだから。
部下の提督という提督。近隣にいる連中は、みんな呼ばれているはずだよ。
……基地を留守にしたくないんだけどな。
ここは本部にいちばん近いと言っても過言じゃない程度には近隣地の後方基地だからね。
ああ、そうそう。佐世保組も呼ばれているらしい。
マジ? ……というか、その情報はどこから入ってきたの?
ん?
まぁ、同期関連の連絡網……とでも?
……誰かいたっけ? ヒロミさんの部下で同期って。
……ヒナセ、君、本気でそれ言ってるか?
うん。
……ホントに君は、同期関係への関心が薄いな。
すみませんね、人付き合い悪くて。
(肩をすくめる)
……それはともかくとして……だ。
式典行事への参加となると、アレがいるよな。
君、決めているか?
アレ?
艦隊曲。
へ? いるの?
いるとも。
あー……。
曲目を提出しないと音楽隊が困るぞ。
それともなんだ。君の艦隊だけ無音で長官の前を行進する気か?
……そう言うレーコさんは決めてんの?
もちろん。提督になった時に決めて、それをずっと使ってる。
無論、式典の当番に当たった時くらいしか使わないからね。両手の指で余るくらいだな。演奏したのは。
式典当番なんて、そうそう回ってくるもんじゃないからね。
そうだな。
……で、何?
ん?
曲。
ああ……『錨を上げて』だよ。
あー……イヤになるほど似合いそうだね。
お褒めにあずかって光栄。
褒めてないし。
アメリカさんの公式行進曲だっけ。
アイオワとか旗艦にするとさらに板に付いた感じになりそう。
旗艦は誰?
今回は『那智』だね。
あらま、めずらしい。
妙高さんじゃないのか。
(にこ、と微笑む)
……なんかあったな。
……イヤ別に……。
なるほど。
……で、ヒナセ。
君は決めてあるのかい?
一応ね。
だって、艦隊指揮官になった時点でとりあえず申請出さないといけないじゃない。
ペナルティがあるわけじゃないから『保留』で申請してそのまま……って提督も多いけどね。
マジなの。アレ絶対出さないといけないと思ってた。
真面目な君らしい回答だね……で、何で申請しているんだい?
……『行進曲 軍艦』※いわゆる軍艦マーチ※
……それまた、キミに似合わず勇猛な曲を選んだな。
……それしか知らなかったんです。
は?
私の音楽の成績、知ってるでしょ! もー!
音楽のみならず、芸術方面全般において素敵な成績だったのは知ってるよ(爽やかに笑う)
きー!
……ふむ。しかし悪くないかもな。
『軍艦』のあとに『錨を上げて』は、流れとして悪くない。
なんで私のあとにレーコさんなんだよ。
違うかも知れないでしょ。
通例でいくなら、同基地はまとめるからな。
だとすれば、立場上君が先になる。
階級一緒なのに!
階級は一緒でも、役職は君の方が上でしょ、課長。
ああそうですね、課長代理。
……こんなことなら、知ってる曲って理由で適当に決めるんじゃなかったなぁ。
どうせ演奏したりされたりなんてことないだろうって、嵩括ってた。
姫提督の下にいるのに、どうしてそう思うかな。
………。
しかしまぁ、今回は我々はさほど目立ちはしないだろうね。なにせ彼も出るそうだから。
彼?
我が鹿屋第三部の名物男さ。
あー。オトマルさんか。
彼の艦隊はある意味壮観だからね。
だね。戦艦どころか空母も二隻しかいないのに、あれほど派手な艦隊は他に見たことない。
左様左様。
あの艦隊が平時にフルセットで見られるだけでも、僥倖と言うべきだろうな。
……そうだ。密閉容器《タッパー》持って行かないと。
いや……それは……。
話が違っているぞ、ヒナセ。
そのくらい楽しみがあっても良いと思う。
……子供じゃないんだから、駄々こねないでくれよ。
ぷぅ。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
○鹿児島湾 鹿屋基地軍港内 式典当日
鳳翔艦橋で、ヒナセが妖精さんを介してカワチ提督と喋っている。
(我々の出番が無事に終わって良かったですな)
……だから嫌だって言ってたのに……。
(いや、なかなか雄壮な艦隊行進で、我が三三六分基地の印象も深くなったでしょう)
だーかーらー目立つこと自体が嫌なんだって。
(それは仕方ありませんなぁ。第二艦隊とバランスを取るためには、武蔵くらいが旗艦じゃないと。
もちろん鳳翔さんが旗艦でも、見劣りはしないどころかベテラン艦の偉容を十分見せつけることはできますけどね)
……いや。それはそれで困る。表向きは建造艦なんだし。
(そう言えば。ウチの第一艦隊を見て、旗艦は武蔵ではなく大和と勘違いした連中も少なからず居そうですな)
いやよく見なくても違うでしょ。
(大和型と『鳳翔』の組み合わせが、その勘違いを誘発する一種のフィルターみたいなものですからね)
……うむー。
(なんにせよ、これといった問題もなく我々の出番は終わりです。それだけでも重畳ですな)
そーだね。あとは誰が勘違いしようが妄想しようが、好きにすれば? って感じかな。
(姫提督直属の偉容も見せつけてやれたし、まぁ『良き哉』というところですな)
……そこはちょっと勘弁して欲しいところだったんだけどね。
とにかく私は目立ちたくない。
(時すでに遅しですよ)
……はぁ……
(そんな、盛大にため息吐かんで下さい……あ、そろそろ彼の出番だ。これで私たちのことは綺麗さっぱりみんなの脳内から消えますよ、きっと)
……そうであって欲し―――
ヒナセが言い終わらないうちに次の艦隊曲のイントロが流れ始める。
(来ましたな)
メインテーマの音量が大きくなり、
小規模ではあるが、通常とはまったく異なる編成の艦隊が主会場に粛々と入ってくる。
主隊が見え始めると、式典会場がざわつき始め、空気がどよめく。

先頭(旗艦)は『天龍』、次に空母『飛鷹』その左右に『大井』と『北上』
後方主隊に『間宮』と『伊良湖』がそれぞれ三隻複縦陣で。
その左右に『黒潮』『夕立』
後方に『ガンビア・ベイ』さらに後ろに『叢雲』
そして殿は『龍田』

演奏されている艦隊曲は『おもちゃの兵隊のマーチ』(某調味料メーカーがスポンサーの、料理番組のオープニング曲のアレ)
やっぱお持ち帰り用の密閉容器を用意しなくちゃって気分になるよ。
(二大料理番組の片割れのテーマ曲ですからな)
まぁねぇ……。
というか、あのフレーズが聞こえると、そろそろお昼だなぁって思っちゃうよ。
(……もしかして、姫提督のオフィスで流していた……とか?)
いんや。明石の工房で時計代わりにテレビが付けてあってねぇ。
艦娘用の軍内放送枠だから、見られる番組は限定だし局もごたまぜなんだけど、あの番組だけは本放送とおなじスケジュールで十一時四十五分から始まるんだよね、なぜか。
(なるほど。それは罪作りな)
カワチの苦笑が妖精さん越しにヒナセの耳に届く。
ヒナセはちょっと肩をすくめて
あー……
オトマルさんの作ったオムレツ食べたい。あのほら……卵で焼き固めたみたいな。
(ヒナセ司令。あれはオムレツじゃなくてキッシュって言うんですよ)
……そなの?
(それ、イワヤ提督が聞いたら泣くから、リクエストの際は、まず私に言って下さい)
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