武蔵と隼鷹 甘え
武蔵と隼鷹 甘え 本文
○夜。 そして闇。
眠っている隼鷹。
隼鷹
……ん……あつ……?
自分の体がなにかに戒められていることに気づく。
隼鷹
……(自分を戒めるものをまさぐって)
……ん……(まさぐっていた方の手でぽん、ぽん…と軽く叩いてやり、
反対の手でそっと抱いてやる)……よし、よし……。
……ん……(まさぐっていた方の手でぽん、ぽん…と軽く叩いてやり、
反対の手でそっと抱いてやる)……よし、よし……。
??
……。
隼鷹、自分を戒めている力がきゅ…と堅くなる感触に、
小さくかすかにため息をついて
小さくかすかにため息をついて
隼鷹
おやすみ。
……ちびすけ。
……ちびすけ。
「ちびすけ」と言われて、ごそり、と動く影。
それは隼鷹の言葉どおりに小さくはなく、山のように大きい。
それは隼鷹の言葉どおりに小さくはなく、山のように大きい。
隼鷹
(うっすらと目を開けて、下目遣いに「ちびすけ」を見る)
………。
………。
隼鷹の視界に入るのは、この暗闇でもうっすら白く浮かぶ髪。
頭頂部の左右らしき部分に見え隠れする、小さな尖り跳ねた部分によって
それは武蔵であると分かるだろうか。
隼鷹は再び目を閉じて、くしゃり……と髪をかき回してやる。
頭頂部の左右らしき部分に見え隠れする、小さな尖り跳ねた部分によって
それは武蔵であると分かるだろうか。
隼鷹は再び目を閉じて、くしゃり……と髪をかき回してやる。
隼鷹
……大和は元気だったかい?
武蔵
……ああ……変わりない。
隼鷹
……そうかい(手は動き続け)
(……まったく。この世にゃカミサマってものはいないんかね……)
(……まったく。この世にゃカミサマってものはいないんかね……)
隼鷹
なんでこんなことになっちまったかね……。
武蔵の、隼鷹に抱きつく力がぎゅ…と強くなり、隼鷹の胸に頭を強く埋める。
隼鷹、視線を暗い天井をに上げ、小さくため息をつく
隼鷹、視線を暗い天井をに上げ、小さくため息をつく
武蔵
………。
隼鷹
………。
(独白)こうやって、どうにもならなくなったコイツが、
アタシのところに来ることに
アタシに甘えに来ることに
アタシは密かに喜んでいる
(独白)こうやって、どうにもならなくなったコイツが、
アタシのところに来ることに
アタシに甘えに来ることに
アタシは密かに喜んでいる
隼鷹
いいかげん、乳離れしな(言葉とは裏腹に、優しくぽん、ぽんと撫で続ける)
隼鷹
(ウソつけ。自分が乳離れさせてねーんだろ)
隼鷹
(独白)ああ、まったく。
度しがたいのは、アタシ自身だよ——。
度しがたいのは、アタシ自身だよ——。
暗闇の中、隼鷹の手は武蔵を撫で続けて——。