ヒナセと電と明石 プレゼント
ヒナセと電と明石 プレゼント 本文
これも、まだふたりしかいない頃のお話。
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○ヒナセ基地 湾内係留岸 ヒナセと明石
ヒナセ
お疲れさま。姫提督によろしくね。
明石
りょーかいしました。
……あ、提督。
……あ、提督。
ヒナセ
あに?
明石
えっと……電ちゃんに、ゴメンね、って言っといてください。
ヒナセ
あー、はいはい。了解。
明石
すみません。ついうっかり。
ヒナセ
うん……次は気をつけてね。
明石
はい。がんばります。
ヒナセ
うん(歯切れ悪く)
明石
では、失礼します(敬礼)
ヒナセ
はい、おつかれさん(敬礼)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
○ヒナセ基地司令棟(掘っ立て小屋)
ヒナセが戻って、ドアを開けながら。
ヒナセ
デン? デーン。
電が奥からおずおずと出てくる。
電
……はいなのです。
ヒナセ
(優しく笑って)明石は帰ったよ?
電
はいなのです。ご、ごめんなさいなのです。
ヒナセ
んー。明石ってば声が大きいもんねぇ。あの明石は特に元気すぎてね。
気をつけるように、常に言ってんだけどね。
気をつけるように、常に言ってんだけどね。
電
……ごめんなさい、なの……です……。
ヒナセ
デンは何も悪くないよ。イケナイのは明石のほうだね。
来たときも来る前にもちゃんと「気をつけて」って申し渡しているのにうっかり忘れちゃう。一度や二度じゃなくて毎回だから。あれは明石が悪いんです。
来たときも来る前にもちゃんと「気をつけて」って申し渡しているのにうっかり忘れちゃう。一度や二度じゃなくて毎回だから。あれは明石が悪いんです。
電
……(さらにしょげてしまう)
ヒナセ
(その様子を見て)……じゃ次に明石が来たときには、クチにガムテープを貼っちゃうか?(笑う)
電
はわ……。
ヒナセ
んで、妖精さんに喋ってもらう。トップの妖精さんならそのくらいできるでしょ(悪戯っ子のような顔でウインクする)
電
はわわ……それは明石さんが、かわいそうなのです。
いなづまも、びっくりしないよう、がんばるのです。
いなづまも、びっくりしないよう、がんばるのです。
ヒナセ
じゃ、電もがんばるし、明石にもがんばってもらおうかな……どう?
電
は、はい、なのです。
ヒナセ
うん。じゃ、そうしよう。
じゃ、定期電で、あちらにその旨申し渡しておきます。
じゃ、定期電で、あちらにその旨申し渡しておきます。
電
はわ。
ヒナセ
あ、でね。こっちきて(手招きして司令官室へ)
電
……?
はいなのです(トコトコ付いて行く)
はいなのです(トコトコ付いて行く)
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
○ヒナセ基地司令棟(掘っ立て小屋) 司令官室
先に入ってたヒナセが、デスクの向こうに立っている。
デスクの上には60サイズほどの小さな箱。
デスクの上には60サイズほどの小さな箱。
ヒナセ
これね(電のほうに箱を、デスクの上を滑らすようにして出す)
電
はわ?
ヒナセ
君にね、プレゼント。
私と明石から。
私と明石から。
電
はわわ……(やや困惑したように箱とヒナセを交互に見る)
ヒナセ
(ちょっと困ったような顔で)……リボンをかけて、もっとかわいくプレゼントっぽくすれば良かったねぇ。
リボンがなくても、せめて白い箱とか。
リボンがなくても、せめて白い箱とか。
電
はわわ。
ヒナセ
ま、よかったら開けてみて。
電
は、はい。なのです(箱を開けて中を覗く)
………はわ……はわわわわ……(口をパクパクさせる)
………はわ……はわわわわ……(口をパクパクさせる)
ヒナセ
どうかな?
電
さ、触っても、いいですか?
ヒナセ
もちろんどうぞ。君のだからね。
電
はわ……。
電は箱の中に手を入れ、中身を出す。
中に入っているのは、小さな移植ゴテと子供が砂遊びに使うような小さなバケツ。そしてプラスチックのゾウさんじょうろ。子供サイズの軍手が一ダース。
中に入っているのは、小さな移植ゴテと子供が砂遊びに使うような小さなバケツ。そしてプラスチックのゾウさんじょうろ。子供サイズの軍手が一ダース。
電
(移植ゴテを目の高さに持ち上げて)お名前が、書いてあるのです。
(目がキラキラしている)
(目がキラキラしている)
ヒナセ
私のあまり綺麗じゃない字で申し訳ないんだけどね。
……気に入ってくれた?
……気に入ってくれた?
電
そう、それは良かった(にっこりと笑う)
はいなのです。すごくすてきなのです。
はいなのです。すごくすてきなのです。
ヒナセ
そう、それは良かった(にっこりと笑う)
電
ヒナコさんのお手伝いが、もっとたくさんできるようになるのです。
ヒナセ
期待しています(ニコニコしながら)
電
ありがとう、なのです。……あ。
あの……あの……。
あの……あの……。
ヒナセ
ん?
電
明石さんに……お礼……
ヒナセ
ああ……んー、そうだなぁ。じゃ、こうすれば?
次の定期便のときに、明石にちゃんとお礼をする。
それで良いと思うよ。
それに明石もさ、君のことはよく分かってるし、きみが隠れちゃったのは自分が悪いって分かってるから、今日お礼が言えなくても気にしないよ。
次の定期便のときに、明石にちゃんとお礼をする。
それで良いと思うよ。
それに明石もさ、君のことはよく分かってるし、きみが隠れちゃったのは自分が悪いって分かってるから、今日お礼が言えなくても気にしないよ。
電
はわ……(見えない耳と尻尾が垂れてる)
ヒナセ
……じゃ、こうしようか。
定期電のときに、明石が出たら伝えます。
君がとても嬉しがってたし、お礼も言いたいって言ってたって。
そして、次の定期便のときに、君が直接明石にお礼を言う。
それでどうですか?
定期電のときに、明石が出たら伝えます。
君がとても嬉しがってたし、お礼も言いたいって言ってたって。
そして、次の定期便のときに、君が直接明石にお礼を言う。
それでどうですか?
電
はわ。
はいなのです。そうするのです。
はいなのです。そうするのです。
ヒナセ
じゃ、決まりね。
電
あの……これでお花を育てて、明石さんに差し上げるのです。
ヒナセ
それはいいねぇ。今回チューリップの球根を持って来てもらったから、それにする? 咲くのは春だけど。
電
春……
ヒナセ
植物は花が咲くまでに時間がかかるけど、きれいだし、そのために使ってねってプレゼントしたものを使って育ててくれたお花をもらうなんて、とても嬉しいよ?
電
なのですか?
ヒナセ
(大きくうなずいて)なのです。
電
じゃ、そうしますのです。
ヒナセ
はい。では午後はチューリップの球根を植えますか。
電
はいなのです。
ヒナセ
実験のために多く買ったけど、プランターと地植えで百球くらいだから今日の午後だけで終わると思います。
電
がんばるのです(移植ゴテを握りしめる)
ヒナセ
はい。がんばりましょう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
○ヒナセ基地 湾内遠景
湾内に工作艦『明石』が来ている。
○ヒナセ基地 司令官室
明石
…というワケでですね。
アタシもいろいろと反省したので、ちょっと考えてみました。
アタシもいろいろと反省したので、ちょっと考えてみました。
…と言う明石は、黒子頭巾で顔を隠し、
両手にはイ級ロ級の手作りマペットを付けている。
両手にはイ級ロ級の手作りマペットを付けている。
ヒナセ
……(やや真顔)
明石
……ダメ……ですか?
ヒナセ
いや……努力は認めます。
でもね……(チラリと視線を横に動かす)
でもね……(チラリと視線を横に動かす)
ヒナセが向けた視線の先には、
窓辺のカーテンに隠れて震えている電が。
窓辺のカーテンに隠れて震えている電が。
ヒナセ
……肝心の対象が、これだけ怖がっちゃったらあんまし意味ないと思わない?(苦笑する信楽焼のタヌキ)
明石
……で、デスヨネー……(頭巾を取る)
ヒナセ
もー。前進どころか後退してどーすんのさ。
明石
へへへ……しーませぇん(悪びれずに笑っている)