ヒナセとカワチ・あきつ丸
ヒナセとカワチ・あきつ丸 本文
カワチ提督、ちょっといい?
……君が私を『提督』と呼ぶのはめずらしいな。なにか相談か?
まぁね。
では聞きましょう、ヒナセ司令。
……どうしてこうも、出戻りが出てくるんだろう。
……君はそれを本気で悩んでいるのか?
どゆことよ?
君が相談したいのは、あきつ丸のことだろう?
まぁね。
なら、答えは簡単。「そりゃぁ、当然だろう」
……何でよ。
———。
本当に分からないのか?
本当に分からないのか?
分かるんだったら、お前さんに訊いていない。
(視線を右に、左にやって、また戻し)……、君は本当に朴念仁だなぁ。
お前さんに言われたかないよ。
じゃ、言い方を変えよう。君は、心の動きというモノに疎いな。
自分の行動が他者にどう受け取られるかを、まるで考えない。
自分の行動が他者にどう受け取られるかを、まるで考えない。
………。
鳳翔さんに心から同情する。
鳳翔さんは……昔から面倒見てる子がいろいろ心配なだけでしょ?
……本気で、言ってるか? それ。
………。
自分に嘘をつくのは良くないな。
………。
……だって、嫌なんだもん。
……だって、嫌なんだもん。
嫌じゃなくて、怖いんだろ? 自分の懐に入れるのが。
そしてそれをまた失うのが。
そしてそれをまた失うのが。
………(渋い顔)
私のことはこの際どうでもいいよ。問題は……
私のことはこの際どうでもいいよ。問題は……
出戻りのあきつ丸のことだな。
まー、仕方ないだろうね、君が余計なことをするから。
まー、仕方ないだろうね、君が余計なことをするから。
余計?
馬さ。
あー……。
思い当たったかい?
うーん……。
(肩をすくめて)アレが忘れられなかったんだろう、初期化してもなお……ね。
だから戻ってくる。神通の時もそうだったろ?
結局、神通はこの基地に引き取ることになった。あきつ丸もそうなるんじゃないのかい?
だから戻ってくる。神通の時もそうだったろ?
結局、神通はこの基地に引き取ることになった。あきつ丸もそうなるんじゃないのかい?
うーん……。
……陸さんに未練があるのかね?
……陸さんに未練があるのかね?
……おい。
ん?
……そーゆーわけではないと思うよ。
(真剣に考え込んで)……たかが馬じゃない……うーむ……
……この朴念仁め(呆れて荒く息を吐く)