ヒナセとあきつ丸・馬
ヒナセとあきつ丸・馬 本文
馬を捕らえに行くんです。陸軍さんのお艦《ふね》といっしょに。
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提督どの。
しっ……(声が大きい)
(申し訳ないのであります。……で、あれがそうなのでありますか?)
(うん、そう。……で? 君の見立てはどう?)
(ふむ……そう……ですね……)
(………)
(……もともと、提督殿のお宅で使っていた馬なのでありましょう?)
(んにゃ、厳密に言えば違う……かな。たぶん、アレの親かその前の代を使ってたと思う。
まだ運良く生きてるなら、かなり年寄りになってると思うんだけど)
まだ運良く生きてるなら、かなり年寄りになってると思うんだけど)
(馬の寿命はだいたい二五~三十年であります)
(じゃ、孫かひ孫くらいかな。……私がこの島にいたのは、十三までだから)
(なるほど、三十年以上経っているのでありますな)
(うん……ハネコのお腹が大きかったけど、その子供でもたぶんもう死んでるだろうね)
(では、かなり難しい仕儀であります)
(だろうねぇ)
(でも、欲しいのでありましょう?)
(いれば楽になることがあるからね。農作業とか農作業とか農作業とか)
(提督どの)
(んー?)
(あの馬、もし生け捕ったら、このあきつ丸に世話をさせてもらえるでありますか?)
(ほへ?)
(あの馬、乗りこなしてみたいであります)
(……乗るの?)
(はい。乗馬は軍人のたしなみであります)
(へー……)
(おかしいでありますか?)
(んー……私の家は馬を飼ってたけど、乗ることはしなかったから、そんな気がなくてちょっと驚いただけ)
(あれは乗るには適さない馬でありますか?)
(さー? わからない……てのが、本音。……いいよ、もし捕まえることができたら、君に任せよう。どのみち、一頭じゃなくて二頭くらいいても良いかなって思ってたところだし)
(二頭……でありますか)
(そ。だからまずは、アレ……て思ったの。ウチじゃメスしかいなかった。子供が取りたかったら、夜に外に繋いでおくの)
(……な、なるほど。合理的でありますな)
(苦笑)
(……じゃ、話が決まったところで、今日は撤退しようか。ウチに戻って、作戦を練ろう)
(……じゃ、話が決まったところで、今日は撤退しようか。ウチに戻って、作戦を練ろう)
(はっ、了解しましたので、あります)